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2025/9/5
#調査内容

【徹底解説】委託先管理の基本から重要性、効果的な実践方法

デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速や働き方の多様化に伴い、多くの企業が業務の一部を外部の事業者に委託することが一般的になりました。専門性の高い業務をアウトソースすることで、企業はコア業務に集中し、生産性を向上させることができます。

しかしながら、委託先が原因となる情報漏洩やサイバー攻撃、サービス提供の遅延・停止といったリスクも増大しています。委託先に業務を任せきりにするのではなく、委託元企業が責任を持って業務遂行状況やセキュリティ体制を監督する「委託先管理」の重要性が、今改めて注目されているのです。

本記事では、委託先管理の基本的な概念から、関連する法規制やガイドライン、そして効率的かつ効果的な管理体制を構築するための具体的なプロセスについて、網羅的に解説します。

委託先管理の基本

委託先管理の定義

委託先管理とは、自社の業務を委託した外部事業者(委託先)が、契約内容や法令、ガイドラインに則って適正に業務を遂行しているか、また情報セキュリティ対策などが適切に講じられているかを、委託元企業が継続的に監督・評価・支援する一連の活動を指します。

この活動は、単に委託先にチェックシートを送って回答してもらうだけで完結するものではありません。委託先の選定から契約、日々のモニタリング、インシデント発生時の対応、そして契約終了に至るまで、ライフサイクル全体を通じた継続的なマネジメントが求められます。

委託先管理の重要性:なぜ今、求められるのか

近年、委託先管理の重要性が高まっている背景には、以下のような要因が挙げられます。

  • サプライチェーンの複雑化とリスクの増大:クラウドサービス(SaaS)の利用拡大や、業務委託の多階層化(二次委託、三次委託)により、自社の情報資産がどこでどのように扱われているかを把握することが困難になっています。サプライチェーンの最も脆弱な一点を狙うサイバー攻撃も増加しており、委託先のセキュリティレベルが自社の事業継続に直結するケースも少なくありません。
  • 委託元企業の法的責任:個人情報保護法をはじめとする各種法令では、委託先で情報漏洩などの問題が発生した場合、委託元企業にも「監督責任」が問われます。適切な委託先管理を怠った場合、法的な罰則だけでなく、企業の社会的信用を失うことにも繋がりかねません。
  • ビジネス環境の変化:DXの推進により、企業の重要データが社外のシステムで扱われる機会が急増しました。これにより、従来のような社内と社外を明確に分ける「境界型防御」の考え方だけでは、セキュリティを担保することが難しくなっています。

委託先管理に関わる主要な法令・ガイドライン

委託先管理は、企業の自主的な取り組みであると同時に、法令や各種ガイドラインによってその実施が求められています。ここでは、特に重要なものをいくつかご紹介します。

個人情報保護法:委託先の監督義務

個人情報を取り扱う業務を外部に委託する場合、個人情報保護法は委託元企業に対して、委託先に対する監督義務を課しています。

  • 個人情報保護法 第25条(委託先の監督):個人情報取扱事業者は、個人データの取扱いの全部又は一部を委託する場合は、その取扱いを委託された個人データの安全管理が図られるよう、委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならない。

この「必要かつ適切な監督」には、以下のような内容が含まれると解釈されています。

  • 適切な委託先の選定:委託先の安全管理措置が、自社が講ずべきレベルと同等以上であることを確認する。
  • 契約の締結:委託契約書に、安全管理措置、再委託の条件、秘密保持義務、監査権などを明記する。
  • 委託先における取扱状況の把握:定期的な報告を求める、実地調査を行うなどして、委託先が契約通りに情報を扱っているかを確認する。

サイバーセキュリティ経営ガイドライン:サプライチェーン全体の対策

経済産業省と独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公開している「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」は、企業がIT活用を推進する中で、サイバー攻撃から企業を守るための考え方や対策を示したものです。

特に「重要10項目」の中の「指示10:サプライチェーン全体のセキュリティ対策及び状況把握」では、自社だけでなく、ビジネスパートナーや委託先を含めたサプライチェーン全体でのセキュリティ対策の必要性が強調されています。

自社が高度な対策を講じていても、セキュリティレベルの低い委託先が攻撃の足がかり(踏み台)にされるリスクを想定し、サプライチェーン全体でのセキュリティレベルの底上げを図ることが求められています。

各業界のガイドライン

金融、医療、クレジットカードなど、特に機密性の高い情報を取り扱う業界では、より厳格な委託先管理を求める独自のガイドラインが存在します。

  • FISC安全対策基準:金融情報システムセンター(FISC)が策定した、金融機関向けの情報システムに関する安全対策基準。外部委託に関する詳細な項目が定められています。
  • 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン:厚生労働省が策定。医療機関が情報処理業務を外部委託する際の遵守事項が示されています。
  • サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度構築の中間取りまとめ:経済産業省が中間取りまとめを発表。サプライチェーン上の重要性を踏まえ、満たすべき各企業の対策を提示し、対策状況を可視化する仕組みも検討されています。
  • PCI DSS:クレジットカードの会員データを安全に取り扱うことを目的として策定された、カード業界の国際的なセキュリティ基準。委託先もこの基準への準拠が求められます。

効率的で形骸化しない委託先管理のために

ここまで解説してきたように、委託先管理は企業が事業を継続する上で不可欠な活動です。しかし、多くの企業で以下のような課題が聞かれます。

  • 管理対象の委託先が多すぎて、Excelやスプレッドシートでの管理に限界を感じている。
  • 評価や監査にかかる工数が膨大で、担当者の負担が大きい。
  • 管理業務が特定の担当者に依存し、属人化してしまっている。
  • アンケートの回収と保管だけで手一杯で、リスクの評価や分析まで手が回らず、形骸化している。

これらの課題を解決し、委託先管理を効率的かつ実効性のあるものにするためには、管理プロセスを標準化し、自動化する仕組みづくりが不可欠です。

Excel管理の限界、形骸化したリスク評価プロセスの見直し、そしてサプライチェーン全体のリスクに備えましょう!

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