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2025/7/1
#調査内容

【2025年最新】金融庁AIディスカッションペーパーから学ぶサードパーティリスク管理の必須ポイント

金融庁は2025年3月、「AIディスカッションペーパー」を公表しました。 これは、金融分野におけるAIの健全な利活用の促進を目的とし、現状のユースケースや課題、今後の方向性について初期的な論点を整理したものです。

AI技術、特に生成AIの急速な発展は、企業の生産性を飛躍的に向上させる可能性を秘めています。 その一方で、多くの企業はAIモデルの開発や運用を外部のベンダー(サードパーティ、委託先)に依存しており、新たなリスク管理の必要性が高まっています。

本記事では、この金融庁の「AIディスカッションペーパー」を基に、AI時代における企業の委託先管理・サードパーティ管理の重要性と、求められるリスク対応について詳細に解説します。

金融庁「AIディスカッションペーパー」の概要

本ペーパーは、金融機関へのアンケートやヒアリング、国内外の議論を踏まえて作成されており、AI活用におけるリアルな実態と課題が浮き彫りにされています。

金融分野におけるAI活用の現状

調査対象となった金融機関の9割以上が、すでに何らかの形でAI(従来型AIまたは生成AI)を業務に活用していると回答しています。

  • 従来型AIの主なユースケース :書類文書のテキスト化(OCR)、マーケティング、与信審査・信用リスク管理、AML/CFT(アンチ・マネー・ローンダリング/テロ資金供与対策)など、幅広い業務で導入が進んでいます。特に、外部サービスを利用する形での導入が多く見られます。
  • 生成AIの導入状況 :文書の要約・翻訳、情報検索、システム開発の補助など、主に社内業務の効率化を目的とした活用が急速に拡大しています。生成AIを導入済みの金融機関の約7割が、特定の専門部署だけでなく一般社員向けに利用を許可しており、その浸透度の高さがうかがえます。導入形態は、ITベンダーが提供するサービスをSaaSとして利用するケースが主流です。

AI活用における主な課題

本ペーパーでは、AIの検討・導入・利用における課題が多岐にわたって指摘されています。データ整備、専門人材の確保、投資対効果といった共通の課題に加え、特に委託先管理の観点では次のような項目です。

  • 適切なサードパーティの選択 :多くの金融機関が、自社のニーズに合った適切な外部事業者を選定することに課題を感じています。
  • 情報セキュリティ・サイバーセキュリティ :AIの利用に伴う情報漏洩や、プロンプトインジェクションなどの新たなサイバー攻撃への懸念が高まっています。
  • 個人情報保護 :入力データに個人情報が含まれる場合のリスク管理や、個人情報保護法への適切な対応が課題となっています。
  • AIガバナンスの確立 :AI特有のリスクを管理し、健全な利活用を促進するための全社的なガバナンス体制の構築が求められています。

AI時代に不可欠となる委託先・サードパーティリスクマネジメント(TPRM)

「AIディスカッションペーパー」で示された課題は、金融業界のみならず、外部のAIサービスを利用するすべての企業にとって重要な示唆を含んでいます。企業は、AIがもたらすリスクに対応するため、より高度な委託先管理・サードパーティリスクマネジメント(TPRM)を実践する必要があります。

外部事業者への依存に伴うリスク

従来型AIだけでなく、特に生成AIのような複雑なモデルは自社単独での開発が困難なため、外部事業者への依存は避けられません。しかし、この依存は新たなリスクを生み出します。

  • ベンダーへの過度な依存と集中リスク :特定のベンダーに過度に依存することは、自社内におけるAI関連ノウハウの蓄積を阻害する可能性があります。また、金融安定理事会(FSB)は、特定のサービスプロバイダーへの集中がシステミック・リスクを増大させる可能性を指摘しています。
  • 説明可能性・公平性の担保の困難化 :外部のAIモデルは、その判断プロセスがブラックボックス化しているケースが多く、「なぜその結論に至ったのか」を説明することが困難です。これにより、仮にAIの判断結果にバイアスが含まれていても、その検知や是正が難しくなります。

セキュリティとコンプライアンスのリスク

サードパーティのAIプラットフォームを利用することは、自社の重要な情報を外部の環境に置くことを意味します。

  • 情報漏洩・目的外利用のリスク :従業員が入力したプロンプトやデータが、外部ベンダーによってAIの再学習に利用されたり、意図せず外部に漏洩したりするリスクがあります。
  • 新たなサイバー攻撃への対応 :AIの学習データを汚染する「データポイズニング」や、AIシステムの脆弱性を突く攻撃など、従来の情報セキュリティ対策だけでは対応しきれない新たな脅威が出現しています。
  • 規制遵守の複雑化 :EUのAI法をはじめ、世界各国でAIに関する規制の導入が進んでいます。国境を越えてAIサービスを利用する場合、各国の法規制を遵守する必要があり、コンプライアンスはより複雑になります。

企業に求められる具体的な対応

これらのリスクを管理し、AIを安全に活用するためには、以下の対応が不可欠です。

  • リスクベースでの委託先管理 :既存のサードパーティリスク管理のフレームワークをAIの特性に合わせて適用し、セキュリティチェックなどを実施します。特にリスクの高いAIを利用する場合は、より厳格な管理が求められます。
  • 契約によるリスクコントロール :外部事業者との契約において、データの取り扱い、知的財産権の帰属、セキュリティ要件などを明確に定義し、リスクをコントロールします。
  • 継続的なモニタリングと検証 :導入後もAIモデルの性能や出力データを継続的にモニタリングし、脆弱性診断などを通じて安全性を検証する体制を構築します。
  • 経営陣のリーダーシップ :AIの導入・活用を単なるIT部門の課題と捉えず、経営陣が主体的に関与し、全社的なガバナンス体制を構築することが極めて重要です。

Lens RMで実現する、AI時代に即したサードパーティリスク管理

本記事で解説したように、AIの活用、特にサードパーティが提供するAIソリューションの利用は、これまでの委託先管理のあり方を大きく変えるインパクトを持っています。AIがもたらすリスクは多岐にわたり、複雑化しているため、従来のExcelやスプレッドシートによる管理では限界があります。

株式会社レンズが提供するクラウドソリューション「Lens RM」は、AI時代の新たな要求に応える委託先管理・サードパーティリスクマネジメント(TPRM)を実現します。

  • リスク評価の標準化と効率化 :外部AIサービスに特有のセキュリティリスクやコンプライアンスリスクを評価するためのテンプレートを提供し、リスク評価のプロセスを標準化・効率化します。
  • 情報の一元管理と継続的モニタリング :すべての委託先情報を一元的に管理し、リスク状況をリアルタイムで可視化。AIを取り巻く環境の変化に迅速に対応できます。
  • インシデントへの迅速な対応 :万が一、委託先でセキュリティインシデントが発生した場合でも、影響範囲の特定や対応策の検討を迅速に行うことが可能です。

AIの健全な利活用とリスクコントロールを両立させるためには、戦略的なサードパーティリスク管理が不可欠です。本ディスカッションペーパーで示された課題への対応にご関心をお持ちでしたら、ぜひ「Lens RM」の活用をご検討ください。

より詳細な情報や導入に関するご相談は、こちらよりお気軽にお問い合わせください。

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